あのころの私たちときたら、大人への階段を昇り始めたばっかりで。誰もがみんな、どうやったら大人っぽくなれるかって考えていた……ネ。
中学3年生の私は、女子校のバレー部に入ってて。回転レシーブを覚えることに情熱、燃やしてた。
毎日毎日、アホみたいにゴロゴロゴロゴロと体育館を転がってたけど、部活時間の3分の2は回転練だったけど、胸の中にはいっぱいいっぱい、女のコな想いがあったんだ……。
あれは、家庭科の時間のこと。課題はパジャマ作りで、バストサイズをはかりっこしてたんだ。はかってくれるナミちゃんはニコニコしながら私に近づいてきて、そしてなぜか、フッと動きを止めた。それからためらうように、私のセーターのみぞおち部分をちょっと押さえたんだ。
(……!!)
一瞬の考察のあと、私はその意味を理解してしまった。
『小さすぎて、胸の位置がわからなかったんだ……』
大きい小さいどころじゃなく、あるかないかのレベルなんてひどすぎるよ。そんなの、そんなの女のコ失格だよ!
私は胸を大きくすることを決意した。
「小学校の給食で病みつきになった」という牛乳好きのクラスメイト、クミクミ(巨乳)の真似をしてひたすら牛乳を飲み始めたんだ。
友達には内緒で、とにかく飲んだ。つらかった。おなかを壊すことも、ちょくちょくあった。そんなときには回転練にも参加できなくて、あやふやな言い訳しながら練習を休んだ。
でも、成果はあがってきた。だんだん、胸が大きくなっている。
私はうれしくて、友達の気遣わしげな視線に気づきもしなかったけど……。
「……どしたの?」
すると、思い切った表情で、中野っちは言った。
「私は、だいじょうぶだから。なんとも、思わないから」
「え?」
そして、涙目でおなかを触っていったのだ。
「ここに赤ちゃん、いるんじゃないの?」
――そのとき脂肪が動いた。
デブはそれなりに巨乳だという事実を、私は見逃していた。牛乳をハイペースで飲みつづけた成果は、胸以外の体ぜんぶに均等にあらわれている。
急に太り、回転練も休みがちな私を、中野っちはつわりだと信じていたのだ。
胸を残しながら、脂肪をそぎおとしていくこと。
女の永遠のテーマに、はじめて出会った瞬間だった……。
〜fin〜